粉じんや溶接ヒューム、オイルミストなど、目に見えない有害物質が空気中に漂う可能性がある作業現場。こうした環境で作業者を守る役割を担うのが、防じんマスクです。数多くの防じんマスクの中から適切な製品を選ぶには、国が定める「国家検定」とマスクに表示される「スペック」を正しく理解することが大切です。
本コラムでは、防じんマスクを選ぶ上で知っておきたい国家検定と防じんマスクのスペックについて解説します。
防じんマスクの国家検定
防じんマスクは、呼吸器を保護するための保護具であり、その性能は、作業者の健康を守るために高い信頼性が求められます。このため、日本では厚生労働省がメーカーの型式ごとに性能・構造を検査し、国が定める基準に適合した製品のみを国家検定合格品として認めています。
国家検定の試験条件
| 試験粒子 | 濃度 | 粒径 | 流量 | 試験時間 |
|---|---|---|---|---|
| 塩化ナトリウム(NaCl) | 50mg/m3以下 | 0.06~0.10マイクロメートル | 毎分85リットル | 100mg 供給するまで |
| フタル酸ジオクチル(DOP) | 100mg/m3以下 | 0.15~0.25マイクロメートル | 毎分85リットル | 200mg 供給するまで |
粒子捕集効率によるマスクの分類
防じんマスクは、以下の組み合わせにより計12区分に分類されます。
- 形状:使い捨て式(D)/取り替え式(R)
- 対象となる粒子状物質の性状:固体粒子専用(S)/固体・液体粒子兼用(L)
- 粒子捕集効率:区分1(80%以上)/区分2(95%以上)/区分3(99.9%以上)
12の分類
| S(Solid) 試験粒子に固体の塩化ナトリウムを用い測定 | L(Liquid) 試験粒子に液体のフタル酸ジオクチルを用い測定 | 粒子捕集効率 | |
|---|---|---|---|
| D(Disposable) 使い捨て式 防じんマスク | DS1 | DL1 | 区分1 80%以上 |
| DS2 | DL2 | 区分2 95%以上 | |
| DS3 | DL3 | 区分3 99.9%以上 | |
| R(Replaceable) 取り替え式 防じんマスク | RS1 | RL1 | 区分1 80%以上 |
| RS2 | RL2 | 区分2 95%以上 | |
| RS3 | RL3 | 区分3 99.9%以上 |
作業内容や粉じんの種類による防じんマスクの使用区分
作業内容や取り扱う粉じんの種類によって、防じんマスクの使用区分が定められています。
| 粉じん等の種類及び作業内容 | 防じんマスク 性能の区分 | |
|---|---|---|
| 安衛則第592条の5 廃棄物の焼却施設に係る作業で、ダイオキシン類の粉じんのばく露のおそれのある作業において使用する防じんマスク | オイルミスト等が混在しない場合 | RS3、RL3 |
| オイルミスト等が混在する場合 | RL3 | |
| 電離則第38条 放射性物質がこぼれたとき等による汚染のおそれがある区域内の作業又は緊急作業において使用する防じんマスク | オイルミスト等が混在しない場合 | RS3、RL3 |
| オイルミスト等が混在する場合 | RL3 | |
| 鉛則第58条、特化則第43条及び粉じん則第27条 金属ヒューム(溶接ヒュームを含む。)を発散する場所における作業において使用する防じんマスク | オイルミスト等が混在しない場合 | RS2、RS3、DS2、DS3 RL2、RL3、DL2、DL3 |
| オイルミスト等が混在する場合 | RL2、RL3、DL2、DL3 | |
| 鉛則第58条及び特化則第43条 管理濃度が0.1mg/m3以下の物質の粉じんを発散する場所における作業において使用する防じんマスク | オイルミスト等が混在しない場合 | RS2、RS3、DS2、DS3、 RL2、RL3、DL2、DL3 |
| オイルミスト等が混在する場合 | RL2、RL3、DL2、DL3 | |
| 上記以外の一般粉じん作業 | オイルミスト等が混在しない場合 | RS1、RS2、RS3、 DS1、DS2、DS3、 RL1、RL2、RL3、 DL1、DL2、DL3 |
| オイルミスト等が混在する場合 | RL1、RL2、RL3、 DL1、DL2、DL3 | |
※上記は従来から広く参照されてきた防じんマスク選定基準、厚生労働省通知(平成17年2月7日基発第0207006号別紙)に示された防じんマスクの使用区分を参考に整理したものです。
※現在は厚生労働省通達「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月25日基発0525第3号)により、リスクアセスメント結果や要求防護係数に基づく選定が基本となっています。
日本バイリーンの国家検定合格品
DS2
X-3502FT、X-3562FT、X-3702FT、X-3762FT、 X-1302FT
DS1
X-3501、X-3561
※防じんマスクの選択の詳細については、厚生労働省通達「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月25日基発0525第3号)を参照してください。
防じんマスクのスペックの読み方
防じんマスクの製品紹介やパッケージには、性能を示すさまざまな指標が記載されています。ここでは、特に重要な項目と意味を整理します。
| 粉じん捕集効率(%) |
粉じんをどれくらいろ過できるかを示す指標。数値が高いほどろ過性能が優れていることを意味します。 |
|---|---|
| 吸気抵抗値/排気抵抗値(Pa) |
マスクを装着したとき、吸う/吐くときの「呼吸のしやすさ」を示す値で、Pa(パスカル)で表します。値が低いほど呼吸がしやすくなります。 |
| 吸気抵抗上昇値(Pa) |
一定の粉じんがフィルタに捕集されたときに、フィルタの目詰まりによって、どれくらい吸気抵抗値上昇したかを示す値で、Paで表します。この数値が低いほど目詰まりしにくいフィルタであるといえます。 |
| 濡れ抵抗値(Pa) |
呼気によってマスクが湿った状態で、どれぐらい呼吸しやすいかを示す値で、Paで表します。この値が低いほど、使い続けていても呼吸しやすいといえます。 |
| 使用限度時間 |
厚生労働省は「使い捨て式防じんマスクの機能を損なうことなく使用できる時間」を使用限度時間と定義し、製品にこの時間を表示することを義務づけています。使用限度時間に達したら、マスクを取り替えなくてはなりません。また、決められた時間内であっても、次のような場合には新品と交換してください。 |
適切な選択が、安全と健康を守る
国家検定は、「国が定める性能基準に適合していることの証」であり、「安全に使用できる防じんマスクであることの証」です。また、マスクのスペックは「どの現場に最適か」を判断するためのものです。
これらを正しく理解し選定することで、作業者の健康を確実に守ることができます。
日本バイリーンは、国家検定に適合した高品質な防じんマスクの提供を通じて、これからも安全で快適な作業環境づくりに貢献していきます。






